おもえば小さい頃から私の隣には誰か、いや、何かがいたような気がする。 小学校の遠足の帰り道にも、眠れない夜、部屋の天井の染みをぼうっと眺めているときにも、 家でひとりお留守番をしているときにも、家の庭の花壇の影におばけを見た時にも、 制服のポケットにカッターナイフを隠したときにも いつも何かが隣にいて、私に問いかけてきた。 気分はどう?あのこについてどうおもう?今日はママがおふとんを干しておいてくれたって。今日のおやつはなにかしら。 彼女、あるいは彼(彼女、ということにしておこう)は、いったいどこにいるのだろう。 私にずっと、ぴったり寄り添って、私に問いかけてくる。いつでも。 「あなた、遠足のとき誰も友達いなくて、帰り道ひまだったんじゃない?」 「ううん。ずっと自分とおしゃべりしてたから、ひまじゃなかったわ。」 私はとんでもない、というふうにそう答えた。 "彼女"は、"私"なのかしら。 ひとりでいても、どこかひとりではないような気がしていた。 "彼女"がいるおかげで、私は孤独ではなかった。なにもこわいものなんてなかった。 だけどいつの日にか、私の隣に彼女はいなくなっていた。 とてもとても静かになった。 お喋りで我儘な彼女は、いったいどこにいってしまったのだろう。



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