いかないで、なんていえるはずがなかった
闇の中に浮かびあがる花火、けむり、笑い声、
水をためたバケツに黒く浮き上がる花火の残骸
切なくて、泣きそうになった
夏の楽しみを凝縮したような、
生きる実感をなにより感じることのできる、
この夏という愉快に満ちたその絵画の一部分を切り取りながら、
その端で、わたしは泣いていた
笑い声にまぎれてながら、うん、うん、と笑って頷きながら、
わたしは、泣いていた
わたしよりもずっと遠いところであなたは笑う
何度目かのさようならが、近づいてくる
きっとこれが最後のさようならなのかもしれない
わたしたちは、ばらばらに散る
わたしだけが、ここに残る
変わらずに、変われずに、ずっとここにいる
夏の色に、染まれないよ
闇に響くその声が、あまりに冷たく、わたしは震えた



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