"かえりたい"なんて、いくら願ったって もうぼくら、ひきかえすことはできないよ おおきく深呼吸をして だれもいない住宅街をかけだした 吐く息は鮮明に白くて ぼくは両手をこすりあわせた 雪が降り出しそうなくらい寒くって ぼくはマフラーに顎を擦らす 空に浮かぶ一面の星空が、あまりにきれいで はっとしたぼくは、足をとめた あれからやがて、星と星とを繋ぐあの線の名前をぼくは知ったよ 星の名前も、ぼくはおぼえた なぜだかたまらなくいとおしく、やさしいきもちになってきて でも もう後戻りはできないんだって 刃物のように冷たく鋭いことばがこころを遮る ぼくは星空をくしゃくしゃにして 振り切って、ポケットの中にしまいこんで 真冬の夜の空の下を駆け抜ける いつか辿りつけるなんて、根拠のない自信を握った拳に抱きながら 待っていて、それまで待っていて お月さま、どうか ひっそりだれかが耳打ちする "もう、帰ることなんてできないよ" だけどぼくら、過去を笑い飛ばすよ "さあ"、なんて言いながら手をさしのべて 夜の闇のなかにぼくら、飛び込んでいく |